長谷川 栄氏の評論
 パリの空を蔽っている、重くのしかかった
鉛色の色彩や、その下に広がる古色を帯びた
詩と歴史の町の空気を、感覚でキャッチしな
がらリズミカルなタッチで描いている。
 確かに高台、たとえばモンマルトルの丘な
どに昇って眺望すると、このような実感が得
られるものである。ローマ時代に拓かれてい
らい、フランスは栄華と戦乱に揺れ、数多の
芸術家や思想家などの人材を輩出している。
 大森良三さんは荒いタッチで、ナイフを多
用しながら大まかにキャッチしているので、
かえってパリの情景を活き活きと表現するこ
とに成功していると考えられる。
 世界の名だたる大都市には、感覚で個別に
感じられる個性の都市色があるが、パリの都
市が持っている基調の色彩を鮮やかに感じと
って素晴らしい。眼下に広がる一齣一齣の石
造り住居には、人が住み、語らい、今日も歴史
を作っていると思われる。まるで、シャンソン
の音楽が遠くより聞こえて来るようだ。
パリ眺望 F100 
アートマインド
  ART MAIND 
MAY. 2004.No.133
美術情報誌「アートマインド」に掲載されたものを転載致しました!